「あ、お家に居ましたね。国立美術館に行かない?」 「いいけど、何やっているの?」
「外国に行ってしまった日本の古い美術品展なの。ボストンに行ったつもりで行きましょう。」
(ボストン美術館展)
「で、いつ?」
「今日行かれない?今日行きましょうよ。」 11時半を過ぎた時の電話だ。
話はとんとん拍子。Ikuさんと行くことになって、全く別の地域に居るのだが、上野では5分とずれないで待ち合わせができた。
どうしてこんなに素晴らしい美術品が外国の方に行ってしまったのか?日本人が美術品を価値も知らず軽視しているからだろうか。
止むなく国外に出てしまったが、アメリカ・ボストン美術館の保存状態が良かったのはせめてもの救いか。
ちょうど、百合の木が咲いていた。花見時にまた来ることが出来たと、カメラを向けた。
ユリノキは木が高いうえに花が小枝の上に、上を向いて咲くので、なかなか花を撮るのは難しい。花芯が撮れないのは残念。そこに居て撮影する人は、ベンチに靴を脱いでなるべく上から目線で撮影を試みている。
懸命に撮影しているおじさん、おばさんを見て、つい声を掛けたくなる。相手の方も嬉しそうに応答してくれる。
そんな状態を幼い子たちが不思議がるとIkuさんも話題にされた。
「お友達?」「いいえ、知らない人だけれど、ただお話をしたの。」「ふーん」
不思議そうに顔を見詰められたという。
そのあと、時間があったので、また東京芸大の美術館まで足を延ばした。
けれど、特別展を見るのは止めにした。
今見て来た感激を、ミキシングされてしまうのは勿体ないと…。
散策を楽しみ、見て来た美術品の感想などをぼそぼそと話しながら駅まで歩いた。