恋の心理学(2)

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清川妙「古典に読む恋の心理学」から抜粋しました。

―笠女郎は万葉集の中に29種の歌を残している。しかも、その歌のすべてが大伴家持に送った恋の歌である。(略)
―家持は万葉集の最終的な編集長ともいわれている。(中略)
年は20歳を少し出たばかり。家柄もよく、才能もあり、おそらく美貌であった彼は、たくさんの女性たちから思いを寄せられ、もてて、もてて、どうしようもないほどの若き貴公子であった。万葉集には、彼に寄せられた恋の歌があふれている。

その中でも圧倒的に歌数も多く、その歌の質からいってもすばらしいのが、この笠女郎なのである。
 恋の歌のはじまりは、二人が恋の一夜を持ったあとの歌。

わが形見 見つつ偲ばせ あらたまの 年の緒長く われも思はぬ

私が差し上げた形見を見ながら、私を思い出してくださいね。私もあなたのことをいつまでも長くお慕いしていますから。


ここでちょっと驚き!
形見はプレゼントのことで、それは良いとして…。
恋の一夜のあと、おたがいにその下着を取り交わして次に会うときまで肌につけておくという習慣もあったということである。
万葉の頃は秘めている恋、あけっぴろげであっけらかんとしていない部分で、こんなにも激しい思いを抱いていたということの顕れであろう。狂おしいまでの想いと感じてしまう。

“わが形見見つつ偲ばせ”という部分は恥ずかしげで口ごもっている気分があって、笠女郎も家持に自分の下着を贈ったのだろうか…。
―恋のはじめのみずみずしさ、ういういしさが立ちこめている。―

闇の夜に 鳴くなる鶴の 外のみに 聞きつつかあらむ 会うとはなしに

あなたはまるで闇の夜の鶴よ。だって姿を見ることなしに声だけ聞いているんですもの。ずいぶん長くお目にかからないわ。会いたいこと……。

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わが宿の 夕影草の 白露の 消ぬがにもとな 思ほゆるかも

―私の庭のほのかな夕影のなかの草よ。その草におく白露はわたし。白露がはかなく消えてゆくとき、私もまた消えるように悲しくせつなく、あなたのことを思うのよ。
(中略)
夕影草とは笠女郎の創作語。感性あふれる、詩的センスに驚かさせる。


なんだか自分はかなり年老いたのだと自覚するのは、こんな歌を読んだりするときである。
むかしそんなこともあったよなぁ~なんて…。
だから若返る心が芽ばえるといいなぁと、思ってもみたりする。
柔軟でそっとふれるとへこみもするが、すぐ相手の心を敏感に受け止めて優しいこころ…、いま私はかなり強く鈍感な、へこみも跳ね返してしまいそうな心の様に変わってきてしまっていた…と、述懐する。
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by nagotu3819 | 2013-02-03 12:38 | 趣味・作品展・朦朧 | Trackback | Comments(8)
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Commented at 2013-02-03 15:02 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 長沼 at 2013-02-03 15:56 x
万葉集の恋の歌・・・いいですね~^^
家持はモテモテだったようですね。
たしか、笠女郎は年上じゃなかったかしら?情熱的ですね。
下着?取り交わす?!@@; そんな恥ずかしい事(笑
その時代、下着ってあったの?一体どんな・・・?^^;;;
こんな事を言う様では若返りは無理ですね(笑)反省。

恋する人を想う歌。愛しい人が訪ねて来てくれるのを待つだけの時代でした。本当に切なくて胸キュンですね。
Commented by nagotu3819 at 2013-02-03 18:35
15:02の鍵コメさん、コメントをありがとうございます。
感動しますよね。

現代とは違う和服の世界…。いまの時代とは違っています。
女性の心も、違うのよね。
それなのに…男性が昔と違っているのに、相も変わらず「大和なでしこ」の精神を望むなんて、虫がよすぎるよ…ネ!
まあ、そんな男性がいたら、こちらから蹴飛ばしてしまいますけれど…。(ウッフン!)

Commented by nagotu3819 at 2013-02-03 18:42
長沼さん、コメントをありがとうございます。
男性が好きなように動いているし、女性はただ黙って待っているのみ…。

ちょっと驚きです。
でも…。ちょっと待ってください。
下着って、白い小袖でしょう?
今でいえば、肌襦袢なのではないかしら?
そして下着を取り交わすことが流行っていたので、特別なことをしていた訳じゃないのかも?
笠女郎が年上なんだ~。そういうカップルが昔は多かったですよね。長沼さんはお人形作家でよく研究されていて、流石詳しいですね。
Commented by yuyu-prin at 2013-02-03 23:07
言葉ではいえないことも歌で詠む
教養もなく歌や返歌が出来ないとだめですね。

万葉集の頃は女性の服装はわかりませんが
源氏物語の頃はあの衣装だとおいそれと外出はできないので
男性が来てくれるのを待つ。
この時代は意外と恋はおおらかですよね。
Commented by nagotu3819 at 2013-02-04 02:14
prinさん、コメントをありがとうございます。
歌で詠むと、その心は?…と、良くわからないことだってあるのかしら?
言葉で言っても、どういう事?…という事だってありますもの。誤解も多かったのかしら?
いやいや、深読みし過ぎてしまって、そういう意味でいったんじゃないわって言う事も多分にあるのでしょうね…。

書き物で残っているものは、みんな教養があってからこその人の歌だから、そんなこと無かったと思いたいわね~。

自己中の私が、その頃に生きていなくて良かったわ。
みんな自分に良いように考えてしまいがち…。
Commented by weloveai at 2013-02-04 09:10
身分の高い女性の恋いは、もっぱら受け身なんですね
噂話で男性の素性は知っていたかもしれませんが、ただひたすら待つ、待つには自分を磨いてないとダメだという事で、
男性を引き留める魅力を持ち合わせないと
大方の男はふらふらとよその女性の所に行ってしまってたのでしょうね。
下着に笑いましたヮ、こうなると女性の方が積極的だったのではと想像します。
庶民の恋は、どうだったんでしょうか?
Commented by nagotu3819 at 2013-02-04 09:30
ゆすらうめさん、コメントをありがとうございます。
ふたむかし前は、恋の話は「話題」として面倒くさい気もしましたが、老いたことを自覚したら私ったら平気となりました。
厄介な年ごろを抜けたのかしら。
そんな風に考えるのは寂しい…。
いいえ、自由に考えることができるようになったのよ。
いいな~、年を重ねることって(^_-)-☆!

やはり恋は、今でも待つのは女ですよ。
そして振り向いてくれたら、ときめく…。
そう、トキメキの心は絶対失ってはいけないと私自身に言い聞かせています。
男と女というだけでなく、同性同士の友だちでも、素晴らしい芸術作品(絵・音楽・物語など)に出会った時~あぁ良くあることよ…なんて澄ましていてはいけないと。
心のどこかの部分に送り届けなくてはと、思っています。
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