夏つばめ
春に見た時、親ツバメが餌を運んでいた。
とてもスマートにせっせと子育て中だった。
巣の下を見たら、まだ糞の汚れは目立たなかった。
その後間もなく訪れた時、子育て中でいるだろうことを期待していたのに、
子ツバメたちの姿が無かった。
まさか巣立ってしまったようなことは無いはず。
何らかのハプニングで、子どもが居なくなったのか?
親ツバメに何かあったのか?
その巣は空になった。
巣はあるのに、その下は汚れてもいなかった。
巣ばかりがむなしくそこに張り付いていた。
先日久しぶりにそのお店に出掛けたら、
居るではないか。
新しい巣?が作られていて
子ツバメの顔が4羽並んでいた。
それから、用事が済んで30分後
上を見上げて巣を見たら、5羽の子ツバメの顔
さっき顔を見せなかった1羽はどうしていたか?
確か4羽だったのに…と、しばらく見上げて見守ってしまった。
冬までに成長して、大海を渡れるほどになるのだろうか。
昔読んだ絵本が目に浮かんだ。
『幸福な王子』の願いを聴いて手伝うその鳥は
確かツバメ。
せっせ、せっせと人のために働いてくれそうな姿のツバメ。
街角に建っていた彫塑像の王子はツバメの話を聴いて
自分を飾っている、おタカラを
町の貧しい子どもに配達してあげる役目をするツバメ。
煌めく宝石や金箔などプレゼントするものも全て無くなり、
汚い像と変わってしまった幸福な王子、
寒く冷たい町…
王子の像の傍らに冷たくなって死んでいたツバメ。
どうして王子の手伝いをするようになったの…、
暖かい国に渡れなかったの…
渡ることを止めてしまったの…と、
ツバメを想った思い出。
渡り鳥のツバメは冬までに強い翼を育てなければならない。
夏生まれのツバメは飛べるまでに成長してくれるだろうけれど、
冬になる前にたくましく飛べるように大きく成長して海を渡ってね…
…と思いながらその場を去ったことだった。